腎盂尿管移行部狭窄

腎盂尿管移行部通過障害(腎盂尿管移行部狭窄症)

■腎盂尿管移行部通過障害とは?
腎臓でできた尿は腎盂と呼ばれる袋に集まり、尿管を通過し、膀胱に流れます。腎盂と尿管のつなぎ目を「腎盂尿管移行部」と呼びます。腎盂尿管移行部は正常でも少し狭くなっています(生理的狭窄といいます)。この腎盂尿管移行部が何らかの原因でより狭くなり、尿が腎盂に溜まって腫れてしまう病態(水腎症といいます)に至る病気を腎盂尿管移行部通過障害といいます。狭くなる原因は、生まれつきの形、血管による圧迫、炎症など様々です。
腎盂尿管移行部の典型的症状の一つに腰背部痛がありますが、自覚症状がなく進行することも多くあります。病状が進行すると腎機能が低下し、最終的には無機能腎となってしまうことがあります。また、尿路感染症や尿路結石を合併しやすいため、これらの病態を繰り返すことも多くあります。

■主な画像検査
1.CT
水腎症の状態や狭窄部の状態、血管の状態をみる検査です。造影剤を用いて行います。

2.逆行性尿路造影
尿道から内視鏡を挿入し尿管に細い管を入れます。この管から造影剤を尿管に注入し、狭窄部の詳細をみる検査です。

3.腎シンチグラム 
放射性物質を注射し、それが尿に排泄される様子をスキャンします。左右の腎機能の比率や尿がどれだけ流れにくいかがわかります。

4.超音波検査 
水腎症の状態をみる検査です。画像の解像度が低いため詳細な画像は得られませんが、体への負担が少ないため、外来の際に簡単に施行できる利点があります。

これらの検査により診断および治療方針の決定がなされます。また、鑑別疾患としては腎盂尿管がん、尿管結石症などがあります。

■治療
手術療法が治療の基本になります。腎機能や全身状態などを考慮し治療法が決定します。

1.腎盂形成術
多くの場合、第一選択となります。現在は腹腔鏡下腎盂形成術やロボット支援腎盂形成術が標準術式です。術後に再狭窄が起こることが数%程度あります。次項で、当科で施行している腹腔鏡下腎盂形成術およびロボット支援腎盂形成術について述べます。

2.尿管拡張術
内視鏡(尿管鏡)で狭窄部を切開する手術です。腎盂形成術に比べ再狭窄率が高い方法のため、体力の問題等で腎盂形成術が行えない場合などに行われることがあります。

3.腎摘除術
腎盂尿管移行部通過障害により腎機能を失い、無機能腎となる場合があります。無機能腎で発見された場合、感染を繰り返すなど症状が強い場合には腎摘除術行われます。腹腔鏡下腎摘除術が標準術式です。

■腹腔鏡下腎盂形成術・ロボット支援腎盂形成術
腎盂形成術とは?
腎盂尿管移行部の狭窄部位を切除し、腎盂と尿管を糸で縫合する手術です。


従来は開腹手術が行われていましたが、現在は腹部に穴を開け、そこから手術器具やロボットアームを挿入して行う腹腔鏡下腎盂形成術・ロボット支援腎盂形成術が標準術式です。

■筑波大学腎泌尿器外科における腎盂形成術
当科では2012年より腹腔鏡下腎盂形成術を開始しました。保険収載された2020年4月からはロボット支援腎盂形成術も行っており、現在はロボット支援腎盂形成術を基本術式としています。また、患者さんによっては傷が少なく傷跡が目立たない単孔式腹腔鏡下腎盂形成術も行っています。
通常の手術時間は2-3時間、入院期間は1週間です。

現在、当科の腹腔鏡下腎盂形成術・ロボット支援腎盂形成術は年間10-15件で、県内有数の豊富な件数の手術を行っています。また、術後再狭窄症例や巨大水腎症症例などリスクの高い症例に対しても積極的に手術を施行しています。

 
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