男性機能障害

男性機能障害

筑波大学では2003年から、専門の男性機能外来を開設して、男性更年期障害(LOH症候群)、勃起障害(ED)、早漏、遅漏などの射精障害などについての相談・診断・治療を行っています。

男性更年期障害(LOH症候群)はだるい、疲れやすい、仕事に集中できない などの症状を伴うもので、近年はマスコミなどでも取り上げられるようになり、注目されている分野です。ほかに原因となる疾患にかかっていないかを慎重に調べ、男性ホルモンの値を測定した上で、基準値より低い値を示す場合には男性ホルモン補充療法、基準値以上の場合には症状に応じて治療にあたっています。

EDについては内服薬を第一選択として、海綿体内注射、心理的背景がある場合には適宜カウンセリングを併用しながら、治療を行っています。必要に応じて陰圧式勃起時補助具や陰茎海綿体注射のような治療法もお勧めしています。早漏、遅漏などの射精障害に関しては、カウンセリングにより原因を探ると同時に、効果の期待されている内服薬を処方しております。
男性更年期障害、EDに共通する要因として肥満や、高血圧、糖尿病などの因子についても検索し、投薬のみならず生活指導も併せて施行しております。

男性更年期障害(LOH症候群)

男性更年期障害の中でも、泌尿器科が扱うLOH症候群は男性ホルモン(テストステロン)の減少が引き金になっていると考えられます。女性の場合は女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで様々な症状が出ますが、男性の場合は、女性ほど急激にホルモンは減少しませんし、その減少の程度には個人差がかなりあります。
診断の基準となる、テストステロンの値については欧米とは異なり、日本人の独自の基準値が検討され、それに基づいた診断を行うようになりましたが、(フリーテストステロン8.5 pg/ml未満が治療適応、8.5から11.8pg/mlはボーダーライン)、これはあくまでも目安であって、テストステロンの値自体と症状の重症度が相関しないことから、実際は以前の状態からどの程度減少したかが問題になることが予想されています。仕事や家庭でのストレスも加わり徐々に症状が現れますが、周囲にはなかなか理解してもらえず、独り思い悩むことになります。
LOH症候群の特徴として、ほてりや冷え以外に、精神的にはうつ症状や不眠、体力的には筋力の衰えや体のだるさ、性的には性欲がなくなる、朝立ちの回数が減少するなどの症状が強く現れることです。神経質でまじめ、責任感や競争心が強く、几帳面またはせっかちな人は男性更年期障害を発症しやすいと言われています。
男性機能外来では初診時に質問紙表、身体検査、血液検査を行い、男性ホルモン(テストステロン)の値や前立腺癌が無いこと等を確認した後、2~4週間に1回の割合でテストステロン補充療法(注射もしくは軟膏)を行っています。

「最近だるい」「疲れやすい」「仕事に集中できない」などの症状があり、「自分がLOH症候群かもしれない……」そう思ったときは以下のチェックリストに記入してみてください。

男性の老化症状に関する質問票

症状
なし
軽い
中程度
重い
非常に重い
総合的に調子が思わしくない
(健康状態、本人自身の感じ方)
1
2
3
4
5
関節や筋肉の痛み
(腰痛、関節痛、 手足の痛み、背中の痛み)
1
2
3
4
5
ひどい発汗
(思いがけず突然汗が出る、緊張や運動とは関係なくほてる)
1
2
3
4
5
睡眠の悩み
(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、寝起きが早く疲れがとれない、浅い睡眠、眠れない)
1
2
3
4
5
よく眠くなる、しばしば疲れを感じる汗
1
2
3
4
5
いらいらする
(当たり散らす、些細なことに直ぐ腹を立てる、不機嫌になる)
1
2
3
4
5
神経質になった
(緊張しやすい、精神的に落ち着かない、じっとしていられない)
1
2
3
4
5
不安感
(パニック状態になる)
1
2
3
4
5
からだの疲労や行動力の減退
(全般的な行動力の低下、活動の減少、余暇活動に興味がない、達成感がない、自分をせかせないと何もしない)
1
2
3
4
5
筋力の低下
1
2
3
4
5
憂うつな気分
(落ち込み、悲しみ、涙もろい、意欲がわかない、気分のむら、無用感)
1
2
3
4
5
絶頂期は過ぎたと感じる
1
2
3
4
5
力尽きた、どん底にいると感じる
1
2
3
4
5
ひげの伸びが遅くなった
1
2
3
4
5
性的能力の衰え
1
2
3
4
5
早朝勃起(朝立ち)の回数の減少
1
2
3
4
5
性欲の低下
(セックスが楽しくない、性交の欲求がおきない)
1
2
3
4
5

症状の重症度の評価方法は17~26点が「なし」、27~36点が「軽度」、37~49点が「中等度」、50点以上が「重症」となります。

よく質問される項目(FAQ:Frequently Asked Question)

 自分の症状がLOH症候群にあてはまるのかどうかわかりません。

LOH症候群は「加齢に伴う男性ホルモンの低下に起因する症状・所見からなる症候群」と定義されています。まず、上記の質問表を行ってみて、症状が当てはまるかどうかを確認してみてください。当てはまる項目が多い場合や、症状の重症度が「中等度」以上の場合は、当科の受診をお勧めいたします。初診時に採血を行い、男性ホルモンの値をはじめとした各検査の値を調べます。検査結果はおよそ2週間程度で出ます。

 どういう治療法があるのでしょうか?

現在のところ、男性ホルモンの注射による男性ホルモン補充療法が一般的です。内服薬もありますが、我が国で認められているものは、効果の不安定さや副作用の問題で使用できません。海外ではジェルや貼り薬、安全性の高い内服薬もありますが、我が国ではまだ認可されておりません。市販されている軟膏薬もありますが、これは医師の診察を受けながら使用することが望ましいとされています。漢方薬、抗不安薬、勃起障害改善薬を使用することもございます。実際に患者さんとお話をしていると、お酒やタバコを控え、運動をする習慣を持つようになった方は体調が良くなり、諸症状も改善する印象を持っています。治療を継続しなくてもよくなる、そのような状態に改善するまでのお手伝いができればというのが、当科における治療に対する根本的な考えとなっています。

 治療を開始したらどのくらい通院すればよいのでしょうか?

男性ホルモンが低値を示した方で、前立腺に病気がない方が治療の対象となります。2~4週間に1回通院していただき、男性ホルモン補充療法を行います。効果の表れかたは患者さんによって様々ですが、典型的な方では注射直後より効果を実感される方もいらっしゃいます。どのくらいで効果がわかるかは3回注射すればわかるという意見と、3ヶ月程度かかるという意見が、専門家の間でも分かれるところですが、当科では3回を一つの目安と考えております。また、いつまで通院するかと言うことですが、治療後3ヶ月、6ヶ月の時点で症状の改善度、副作用の程度、患者さんの社会的・心理的な環境およびご希望を考慮して、治療を続けるかどうかをご相談いたします。複数年継続して治療している方もいらっしゃいますが、治療開始後半年も経つと、環境や生活習慣の変化により、ホルモン補充療法をしなくても良くなる方も相当数いらっしゃいます。

 この病気は治るのでしょうか?

何を判断基準とするかによるとは思いますが、ホルモン補充療法をしなくても社会生活上、特に問題を感じないという状態になれば、その時の男性ホルモンの値に関わらず、治療は中断できるかと思います。実際にストレスが改善し、生活習慣を変化させた後に男性ホルモンの基礎値が上昇した患者さんもいらっしゃいますので、当科としては注射だけに頼らない治療を目指していきたいと考えております。

 治療の副作用はありますか?

まず、初めにお断りしておきたいのは、お子さまをつくる予定のある方にはホルモン補充療法は精子の形成を妨げる作用があるのでお勧めできないということです。この治療をしている最中は、精子はとても少なくなります。(しかしながら、中止後に精子数が元の値以上に回復した患者様もいらっしゃいますので、絶対的な禁忌ではありません)。その他に考えられる副作用としては、多血症、精巣萎縮、前立腺癌、前立腺肥大症、女性化乳房、肝機能障害、睡眠時無呼吸、浮腫などが挙げられます。厳重に監視しながら、投与法や用量の調整を行いますので、現在まで、問題になるような重篤な副作用を生じた方は一人もいません。

 前立腺癌になった人はいますか?

動物実験などで男性ホルモンの影響により前立腺癌が形成されたという報告がありますが、盛んに治療されている海外の報告では、現時点でこの治療で前立腺癌になる可能性は否定されています。もちろん、絶対起こらないとは言い切れませんので、治療に携わる医師は、治療前に必ず前立腺癌の可能性について調べ、治療中も厳重に採血などで様子をみております。

 現在、うつ病で通院中ですが、なかなか良くなりません。自分ではLOH症候群ではないかと思っているのですが…

数年前に、男性更年期外来を受診する患者さんの半数以上にうつ病を認めるという報告がありました。LOH症候群の症状は様々ですが、うつ病の症状もかなり重複することや、精神科や心療内科にかかるのは抵抗があるという患者さんが相当数いらっしゃることが、その一因かと思われます。また、既に精神科で投薬を受けているにも関わらず症状が良くならないといって来る患者さんも比較的多くおられます。LOH症候群に関しては、初診時に質問票に答えていただき、男性ホルモンを測定することにより診断が可能ですので、一度相談しにいらっしゃって頂ければと思います。当科でも両方の科にかかり治療を継続されている方もいらっしゃいますし、精神科・泌尿器科が互いに連携し、患者さんを紹介しあい、患者さんにとって最も良い治療を行っていきたいと考えています。

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