尿膜管遺残

尿膜管遺残とは?

尿膜管は胎児期に存在する膀胱から臍に至る管です。胎児の尿は尿膜管を通して母体へ流れます。通常尿膜管は、出生までに線維性組織を残し消退しますが、出生以降も尿膜管が残存している病態が尿膜管遺残です。尿膜管遺残は形態により4つに分類されます。尿膜管遺残に感染した場合は、臍炎、膀胱炎を起こします。また、稀ですが尿膜管遺残が悪性化し尿膜管癌に進展することもあります。

尿膜管開存:臍から膀胱まで尿膜管が残存している病態です。小児期に多い病態で、成長に伴い自然にふさがることもあります。

尿膜管洞:最も頻度が高く、臍の底に尿膜管遺残が接している病態です。感染を起こしやすく、時に臍炎を来します。臍炎になると臍が痛み、臍から膿が出ます。重症化すると発熱したり、臍が赤くポリープ状に腫れたり、強い腹痛が起こることがあります。

尿膜管嚢胞:尿膜管の途中に嚢胞がある病態です。症状を来すことは少なく、検診などで偶然発見されることがあります。

尿膜管憩室:膀胱に接して発生し、時に膀胱に交通がある病態です。繰り返す膀胱炎が典型的な症状です。発熱や下腹痛が発生することもあります。

尿膜管遺残の治療

臍炎に対する治療
臍炎など感染を伴っている場合は、まず抗生剤を投与し感染の治療を行います。臍炎が重症化し膿が溜まった状態を臍下膿瘍といいます。臍下膿瘍となった場合は、臍を切開し排膿します。場合によっては一時的に管を留置することがあります。

尿膜管遺残に対する手術療法(尿膜管摘除術)
手術療法が治療の基本になります。症状がある尿膜管遺残は症状がなくなっても治療せず放置すると30%程度で症状が再発するといわれています。このため、症状の再発を抑えることが手術療法の主な目的です。
従来は臍をくり抜き、下腹部を大きく切開する開腹手術が主流でしたが、近年は腹腔鏡手術が普及しています。現在当科では腹腔鏡手術のなかでも術後傷が目立たない単孔式腹腔鏡手術を行っています。

当科における単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術

尿膜管に対する腹腔鏡手術は標準術式が確立しておらず、施設により様々な方法で手術が行われています。当科では2014年から尿膜管に対する腹腔鏡手術を開始しました。2017年7月から単孔式腹腔鏡手術を導入し、2020年10月までに41件の手術を施行しました。ここでは当科で現在施行している単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術の特徴についてご説明いたします。

尿膜管摘除術では臍から膀胱に至る尿膜管遺残組織を完全に切除することが重要です。尿膜管遺残組織が残ってしまうと症状の再発や、将来の癌化が懸念されます。このため当科では臍の底にある尿膜管開口部から膀胱頂部(尿膜管が付着している部位)までの尿膜管を全長に渡り完全に切除する方法で手術を行っています。

また、尿膜管遺残は若い患者さんが多いこともあり、術後の創(キズ)をいかに目立たなくするかも重要です。このため当科では恥骨の上(下着に隠れる場所)に2-3cm程度の穴をあけ、そこから手術器具を挿入する単孔式腹腔鏡手術にて尿膜管を切除しています。さらに臍の変形を最小限にするために、尿膜管摘除後に臍形成術を併せて行っています。

手術の方法
恥骨上の穴に単孔式腹腔鏡手術用トロカーを留置し、炭酸ガスを注入し手術のスペースと作ります。
トロカーからカメラ、鉗子を挿入して尿膜管を剥離します。膀胱頂部は尿膜管付着部のみを最小限切除し、縫合閉鎖します。
尿道カテーテルを留置し、腹膜および筋膜を縫合閉鎖します。

次に臍形成術を行います。
臍直下の尿膜管組織を完全に切除するには臍の皮膚を部分的に切除する必要があります。
臍の切除は術後に臍が変形することが問題でした。当科では臍の皮膚切除は最小限に留め(直径数mm程度)、大部分残った臍の皮膚を用いて臍形成を行うことで臍の術後変形を最小限に留める術式を行っています。
本手術の手術時間は2-3時間、入院期間は1週間前後です。現在、当科では本手術を年間15件程度施行しています。

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